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欧米を中心に網膜の上または網膜の下に埋植した電極で網膜を電気刺激する方法が試みられてきましたが、前述のように我々の人工視覚グループは、網膜の外側(脈絡膜,強膜)から網膜の内側に貫通するような電流を流して網膜を刺激する独自の方式:脈絡膜上‐経網膜電気刺激方式(STS方式)を開発しました(図:左)。動物実験でSTS方式の有用性が確認できました(機能評価の項目参照)ので、実際に刺激電極を慢性的に埋植するにあたっては、どのような方法で埋植するのが最も安全か、どのような材質、形態のものが生体適合性がよく有用か、などを人間に近い眼を持つ動物で検討することが重要と考えました。そこで、術式開発・生体適合性検討グループを中心として、STS方式に基づく、人眼への刺激電極の埋植にもっとも安全かつ有用な術式の開発、およびそれに見合った電極、付属装置のデザイン、それらの生体適合性の検討を行っています。現在、研究の対象として、中型動物である家兎、ミニブタを用いていますが、そのうちの一つを紹介します。まず、強膜にポケットを作成し、そのポケット内に刺激電極を挿入します。眼底観察を行うと、刺激電極が透見されます(図:中) 。この電極に実際に電流を流して、安全かどうかを、蛍光眼底造影や組織学的に検討しました。また、実際に,脳の視覚をつかさどる領域に反応が生じるか否かを検討し、良好な反応を得ることに成功しました。このように電極の埋植方法を検討し,その有用性を確認しながら,よりよい方式を研究開発しています。また電極を長期間埋植し、その耐久性・生体適合性を検討する実験も、ウサギ・ミニブタを用いて同時に行っており、それにより炎症など生体からの反応がより小さい、より長時間にわたって使用可能な材質・デザインの電極を開発中です。
これらの結果を踏まえ、現時点でもっとも安全で効果的と考えられる手術手技、電極を用いて、すでに実際に、網膜色素変性患者に対し、急性の臨床試験を安全に行っています(図:右)。
このように術式開発・生体適合性検討グループは、より安全でより効果的な人工視覚の実現を目指して研究を推進しています。


 網膜刺激型電極を設置するためには、電極をどのような手術方法で、どの部位に移植するか、移植後どのような合併症が生じる可能性があるかを検討することが必要です。つまり、電気刺激による網膜変化の観察はもちろんのこと、手術侵襲(網膜損傷、網膜剥離、多量出血、術後の炎症反応、増殖性変化など)を減らす術式開発のためにも、術後の人工視覚誘発電極の生体適合性を組織学的に検討することは重要な課題です。
 これまで、脈絡膜上―経網膜刺激方式(STS方式)は、刺激電極挿入時の外科的侵襲予防や安定性において、網膜上や網膜下の刺激電極より優れていることを動物眼を用いて組織学的に観察しました。現在、STS方式の臨床応用に向けて、適切な電極の材質や形態の種類、電流の安全域、設置方法を検討するとともに、慢性埋植における電極の安定性や異物反応などを組織学的に検討しています。