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網膜は,単に光を電気信号に変換するセンサーではありません.変換された電気信号を処理し視神経を介して脳に送っています.従って,CCDカメラの画像をそのまま電気信号に変えて刺激しただけでは,視神経を有効かつ適切に興奮させることはできません.また電気刺激は,内因性の正常な信号とは異なり外部から人工的に与えるものですから,視覚系の細胞にどのような影響を与えるかを詳しく調べる必要があります.我々は,移植電極による電気刺激の有効性および安全性を精査するために,次にあげるようなin vivoおよびin vitro動物実験を行っています.

1.電気刺激が細胞に与える影響を,細胞の電気的応答を指標にして解析する実験.
電気刺激に対する視覚系細胞の電気的応答を,多点電極や電位感受性色素を用いて計測・解析を行っています.図1Aは,電気刺激に対するカエルの剥離網膜神経節細胞の応答を示します.この実験により電気刺激に対する視神経の刺激閾値及び応答の時空間パターンが予測できるようになりました.図1Bは,STS方式による電気刺激によって脳の視覚野にどのような応答が起こるかを,モルモットを用いて調べたものです.この実験によって,STS方式によって刺激された網膜部位に対応した視覚野が興奮することが確認できました.
2.電気刺激が細胞に与える影響を,生理活性物質を指標にして解析する実験.
電気刺激が視覚系細胞に与える影響(特に安全性)は,細胞の電気的な応答を見ただけでは分かりません.ここでは神経活動に重要な細胞内カルシウムの変動を指標にして,電気刺激の影響を調べています(図2).

経角膜電気刺激による残存神経節細胞の機能評価
残存している神経節細胞を評価する検査法として,コンタクトレンズ型電極を用いた角膜を通した電気刺激(経角膜電気刺激)による評価法を開発しました。網膜を経角膜的に電気刺激すると,擬似光覚および瞳孔反応が得られます。これらの電流閾値を求めることにより,残存する網膜神経節細胞の範囲および相対的密度を推定することが可能と考えました。本法により,人工網膜移植の適応を決める対象症例のスクリーニング,および、埋植するならばどの部位が最も効率よく刺激を視覚に変換できるかと言う電極設置場所について検討することが可能な状況となりました。

電気刺激による神経保護の基礎・臨床研究
 我々は、電気刺激が損傷を受けた網膜神経節細胞に対して神経保護効果を有することを明らかにしました。また、網膜色素変性の動物モデルであるRCSラット*を用いて調べたところ、電気刺激は視細胞に対しても神経保護効果を有することも見出しました。さらに実際の網膜色素変性例に対して行ったところ、神経保護効果があることが徐々に分かりつつあります。
現在、電気刺激の臨床応用を目指して、基礎研究および臨床研究を行っています。